ACG eyes 6 : 吉岡千尋、宮田雪乃、笠間弥路 ― 二次元地層学

火曜日に銅版画を教えてくださっている宮田雪乃先生の展覧会のお知らせです。

ACG eyes 6 : 吉岡千尋、宮田雪乃、笠間弥路
― 二次元地層学

2014.5.10 [sat] – 5.31 [sat] 11:00~19:00(土曜日〜17:00) ※日・月休廊
関連イベント
アーティストトーク&レセプション
5.10 [sat] 15:00〜17:00
主催:アートコートギャラリー
協賛:三菱地所株式会社、三菱マテリアル株式会社、三菱地所プロパティマネジメント株式会社

http://www.artcourtgallery.com/exhibitions/4489/

本展について

“ACG eyes”は、アートコートギャラリーが注目する若手作家を紹介する展覧会です。今回は、吉岡千尋、宮田雪乃、笠間弥路の3作家がそれぞれ最新作を発表します。
絵画、版画、古紙への刺繍―。異なる技法とアプローチで展開される、多様な平面表現の試み。重なりを蓄え空間性を孕む地層図のような、三者三様の物語を是非ご高覧ください。

吉岡千尋は、一編の詩を想起させるモチーフを、金属粉や顔料を定着させた下地にグリッドを引き、時にはパズルのように組み替え再構築しながら描き写していきます。素描のような筆致によって、描かれるイメージの全体としての印象は徐々に密度を和らげ、大きな世界の一部を切り取って見ているかのような、画面の外にその続きが存在しているかような空間の広がりを感じさせます。画面の余白は影の形象であり、モチーフ固有の造形や佇まいをより際立たせると同時に、その鈍く静かな輝きは鏡や水面に似た役割を果たし、鑑賞者の視線を作品の内界に引き込むのみではなく現実空間へと緩やかに押し返します。
吉岡はしばしば、同一のモチーフを繰り返し描きますが、それは単なる複製ではなく、自身の内にある詩的な世界を多面体として見せるための謂わば彫塑的な方法として採用されています。本展では、絵筆の太さや筆致のストローク、色彩の明暗などの差異によってイメージの空間認識を変化させる試みに挑戦します。

宮田雪乃は、幼い頃から想像を重ね心の中に築いている「理想の町」の出来事として、現実世界の不穏な事件を登場させ、そのワンシーンをドライポイントの手法で切り取ります。理想の町ではネガティブな要素は削ぎ落とされ、暴力的なモチーフが底抜けに明るい色や愛らしい形象に姿を変え、現実は「ねじれ」ながら楽しげな世界へと転換されてゆきます。また、宮田の作品はネガティブで感情的な衝動からスタートしますが、刷り上がる作品のイメージは、版画特有の制作過程(一度それぞれの色や形に分解された後に、再び刷り重ねられる行程)を進めるごとに冷静で淡々とした佇まいを獲得してゆきます。そこでは初期衝動における情念の籠ったマチェールは退けられ、描かれたイメージは軽やかに、脆い夢幻のように浮遊します。
宮田はこれまで転換する意味そのものを模索するように、色彩や線のフォルムに至るまで全ての要素を力一杯「ねじって」いましたが、近年、より現実味を帯びた率直な表現に変化してきました。本展では、水を中心的なテーマとした新作群を発表します。

笠間弥路は、空間や時間、記憶など、周囲との関係によって捉えられる事象について、インスタレーションを表現の主軸に探究してきました。本展で展開する刺繍のシリーズでは、古い書籍に空いた「虫食い穴」を基点に考察を深めます。古書と、その紙面を往き来しながら生存の場として空間と時間を共有した虫と、刺繍糸で穴を繕う作家自身。時代・時間、経験・思惑が異なるこれら三者の重なりを、一つの画面の中に繋ぎ止めていきます。
紙面の裏側から漏れる光によって、星空のように輝く虫食い穴。文字列はこの穴によって意味を欠落させ、「図像」へと近づきます。また、平面だった紙面には、向こう側の景色を覗く奥行きが生まれ、二次元から三次元の世界へと拓かれていきます。このように、ある事象と事象とが関係することによって、互いに影響を与え合いながら変化していく状況を、笠間は展示空間へも巧みに仕掛けてゆきます。多様な次元に残る痕跡を辿り繋いでゆくことで、自らをとりまく世界との複雑で豊かな関係性を見つめ直す空間装置の創出を試みます。
出展作家

吉岡千尋、宮田雪乃、笠間弥路

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